子どもの未来を変えたいわけじゃなくて、選択肢を増やしたかっただけなんです。
この仕事をしていると、
たくさんのお母さんと話す機会があります。
最初の相談で、
よく聞く言葉があります。
「子どもの未来を、変えたいんです」
でも、少し話が進むと、
ほとんどの方が、こう言い直します。
「……変えたい、というより」
「選択肢を、増やしてあげたかっただけかもしれません」
その言葉を聞くたびに、ああ、本音はそこなんだな、と思います。

僕は父親です。
だからこそ、
「子どもの人生をどうするか」なんて、本当は親が決められるものじゃない、ということも、よくわかっています。
親ができるのは、レールを敷くことじゃなくて、道をいくつか見せておくことくらい。
右しか見えないより、右と左があるほうがいい。できれば、まっすぐ以外の道もあるといい。
それだけで、
子どもはずいぶん楽になります。
これまでサポートしてきたお母さんたちは、本当によく頑張っている方ばかりでした。
家計のことを考えながら
子どもの将来を考えて
自分のことは、いつも後回し。
「私が我慢すればいいので」
そう言う方ほど、実は限界ギリギリだったりします。
・このまま日本で頑張り続けていいのか
・教育費は大丈夫なのか
・子どもが大人になったとき、世界はどうなっているのか
誰にもはっきり答えがないからこそ、一人で抱えてしまう。
フィリピン、ドゥマゲッティという場所を選んだお母さんたちも、
最初から「海外に行こう!」と決めていたわけではありません。
むしろ多かったのは、
「留学とか移住とか、正直よくわからない」
「自分にできるとは思っていない」
「でも、このまま何もしないのも不安」
そんな、揺れている状態でした。
だから最初は、「話だけ聞いてみたい」それだけだったんです。
ドゥマゲッティは、派手な街ではありません。
物価は安く、治安も落ち着いていて、人が穏やか。
子育てをするには、ちょうどいいスピード感があります。
英語環境といっても、完璧じゃない英語で、みんなが助け合う空気がある。
子どもたちは、「正しく話す」より先に「伝えようとする」ことを覚えていきます。
これは、机の上だけではなかなか身につかない力です。
あるお母さんが、こんなことを言っていました。
「英語ができるようになってほしかった、というより
逃げ道があるって、子どもが知れたのがよかったです」
日本だけが世界じゃない。ここが合わなかったら、別の場所もある。
そう思えるだけで、子どもも、親も、少し楽になる。
未来を変えたわけじゃない。選択肢が一つ、増えただけ。
でもそれは、想像以上に大きな違いでした。
相談の最後に、「決めきれなくてすみません」と言われることがあります。
でも、僕はいつもこう伝えています。
「決めなくて大丈夫です」
「聞いただけでも、十分前進ですよ」
知らないまま不安でいるより、知ったうえで選択するほうが、ずっと健全です。
父親としても、このスタンスはとても大事だと思っています。
もし今、
・子どもの将来を考えると不安になる
・今の生活が悪いわけじゃないけど、行き詰まりを感じる
・何かヒントがほしい
そう思っているなら。
いきなり決断しなくていい。
留学や移住を目指さなくてもいい。
ただ、選択肢の話を聞いてみるだけでいいんです。
それは、子どもの未来を変えるためじゃなくて、未来を「狭めない」ための一歩かもしれません。
父親として、そして現地で暮らす一人の人間として、
知っていることは、正直にお話しできます。

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